学士

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思わぬ神威の案に、レンは呆気にとられたように神威を見返す。 「………旅を、ですか?」 「そうだ。 我も真実を知りたい。 目的はレン殿とやや違ってはいるが、求めている行き先は同じだと我は思うのだが。」 「で、ですが、危険が伴うと言ったのは神威先生なんですよ?」 少し焦ったような声を上げたレン。 それに全く構う様子も無く、神威はレンに微笑んだ。 「これでも一応良い所の家の出だ。 武術もそれなりに心得ている。 レン殿の足手まといにはならないと思っているのだが。 如何だろうか?」 「………………。」 しばらく考えを巡らせていたレンだったが、決心をしたのか観念したのか分からないような小さなため息を一つついた。 「………分かりました。 それに、仲間は多いほど心強いですからね。」 「………………? その口振りではもしや既に他にもお仲間が?」 「ええ。 と言っても一人ですが。 ここに来る途中で一緒に旅することになったんです。」 「ほう、そうでありましたか。 では、顔を合わせるのが楽しみだ。」 二人は顔を見合わせて小さく笑いあった。 カツ………………コツ………………… 不意に遠くから小さな足音が神威の耳に入ってきた。 それからすぐに真面目な顔つきに戻り、扉の方に目を向けた。 「………どうやら今日はここまでのようだ。 レン殿はこの下の町に宿を取っているのか?」 「…………? え、ええ、そうですが。」 突然の神威の変わりように戸惑いながらもレンは頷き返す。 「では後日、そちらに合流いたそう。 場所は明日辺りに文を送ろう。」 「…………分かりました。 では神威先生、今日は………………?」 礼を述べようとしたレンを神威は制し、それから少し照れたように微笑んだ。 「“先生”はいらぬ。 どうか神威と呼んではくれないか。 我は“先生”と呼ばれるほどの者ではない。 それに、これから旅を共にするのだ。 レン殿の楽な話し方で話してもらいたい。」 照れながら言った神威が可笑しかったのか、レンはクスクスと笑いながら頷く。 「分かった。 そうさせてもらうよ。 じゃあ、俺も以下同文ね。」 「フッ………相分かった。 我は外までは送れぬ故、此処の者に頼もう。 では此方へ。」 神威が扉を開けて出て行った後にレンも続いて部屋の外へと続いた。   
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