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「随分と歌姫の弟君と仲良くなられたのですね。」
レンの後ろ姿を見送っていると、不意に後ろからルカが口を開いた。
神威が振り返ると、そこには最早微笑みすら消えた、ただ冷たいだけのルカの姿があった。
「わざわざ翼竜教の中心部であるこの教会に訪れておきながら、貴方にしか会わないなんて。
余程慕われているのですね。」
皮肉たっぷりな言葉に神威は心の中でため息をついた。
この世界の安寧を司る竜を崇拝する翼竜教。
その翼竜教神官の中でも、ルカが特に信仰が厚いということはこの教会だけでもなく、翼竜教に関わる者達の間では周知のことだった。
歌姫の弟がわざわざ翼竜教の中心であるこの教会に訪ねてきたにも関わらず、学士の神威以外と誰とも会することなく帰ってしまったのが余程不服だったのだろう。
「……………何処から我の事を知ったのは知らぬが、彼は我を訪ねられただけ。
彼も多忙なのだろう。
すぐに帰られたのも仕方ないではありませぬか。」
「…………………。
まぁ、いいですわ。
それで、彼は如何でしたか?
さぞ良い生徒だったのでしょうね。」
「ええ。
中々に賢い方であった。
我も教え甲斐がある。」
神威の答えを聞いて、まぁ、とルカは少し大袈裟に嘆息の声を上げる。
「貴方がその様に仰るなんて。
歌姫への関心が本当にお強いのですね………………………貴方同様。」
「……どうやらそのようだ。」
最後の部分に少し棘が含まれていたが、神威は努めて表情を崩さずに続ける。
「歌姫はこの帝国が出来た時とほぼ同時に立てられた存在だ。
歌姫の研究が、帝国の歴史を明かしてくれると我は考えている。」
「………確かにそうかもしれませんね。
折角の機会です。
貴方の帝国についてのお考えを聞かせていただきたいですわ。」
思わぬルカの一言に神威は一瞬息を呑む。
それを見逃さなかったルカは眉潜める。
「……すまぬ。
ルカ殿からそのような言葉が出るとは思わなかったのだ。
よろしければ此方の部屋に。
お茶くらいはお出ししよう。」
「……ではお言葉に甘えましょう。」
誘われるままにルカは先程の部屋へと入っていった。
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