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出された紅茶を一口飲んだルカは神威に視線で言葉を促す。
「………我の考えなど、ルカ殿には合わぬやもしれませんぞ。」
ため息混じりに言った言葉にルカはクスリと笑う。
「私はそれがお聞きしたいのです。」
そこで神威は諦めたように小さくため息をついた。
「…………我はどうも、この世界が歪んでいるように見えるのだ。」
「…………歪んでいる?」
分からない、と言うようにルカは小首を傾げる。
「そうだな………。
この世界は歌姫という存在によって支えられている。
歌姫の祈りの歌が我々民の永遠なる豊穣と安寧を約束してくれている。」
「ええ、そうですわね。
それが何か?」
「それは我々にとってはごくごく自然なことだ。
だがそれが、実は歪められた自然だとしたら?」
神威の問いにルカは眉根を寄せる。
「仰っている意味がよく分かりませんわ。」
「我々は竜と歌姫によって平和と豊かさを約束されている。
何十年、何百年とそれが変わることはなかった。
だが、それは本来有り得ぬ事だ。」
はっきりと言い切った神威に、ルカは小さく息を飲んだ。
「何事にも必ず始まりがあれば終わりは訪れる。
物事でも、命でも、国や世界でも。」
「………………それで?」
「この世界が常に平穏を保ってこられていたのは、ここが特別だっけからか。
否、何らかの力が自然の理を歪めているのだ。」
「その理を歪めている者が歌姫である、と?」
問われて神威は静かに首を横に振る。
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