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あれから十余年。
自分が幼かった頃より少しやつれてしまった母の寝顔を覗きこむ少年の姿が、そこにあった。
窓に差し込む月の光が少年の顔を照らしている。
明るい金髪と碧の瞳を持つ少年。
その瞳には強い光が宿っているが、今はほんの少し、揺らいでいる。
「母さん……………黙って行くけど、許してね。
だけど、俺はどうしても行きたいんだ。
ごめん……………。」
あの子の笑顔を見たいんだ。
最後に小さく呟いて、少年はそっと母から離れ、静かに家を後にした。
綺麗に晴れた夜空には白い満月。
白く輝くそれは、暗いはずの道をやわらかく照らしている。
目の前の道を見つめ、少年は一呼吸おいた。
「………東へ。
待っていて、リン。」
空に向かって語りかけると、少年は進み始めた。
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