第一章

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―――時は二一十八年。 平和が安定してきた日本。  宙を浮く車や二次元的な化学品は無いけれど、文書による一世紀前の建物は残ってる…らしい。  疑問符がつく理由は複雑だけど簡単な話。  六年前、私、珂生ゆかはとある理由で家に、引きこもり、という形で監禁されていた。  理由こそ知らないがここ六年、空を見たのはテレビや写真だけ。それに幼馴染みである 『巻幡キサト』 『細屶カチル』 『誉木須レン』 に別れも告げられず家に閉じ込められてしまった。  心配性にも程がある。そう思った両親は私の拘束を解いてくれた二日後に死んだ。否、殺された。  まず、両親を視て思った事は二つ。 『両親を殺した人間は正気の沙汰では無かった』 『両親の笑顔はもう、二度と見れない』  何故か不思議と涙は出なかった。何故か。不思議と。分からないけれど。 「…って。こんなとこで感傷に浸ってる場合じゃない!久しぶりだし…キサトとカチル、レン。…会いに行っちゃお!」  ―――――――なんで私はこの時、幼馴染みに会おうとしたのか。現在でも分からない。現在に至って解ったのは、私が、とんでもない愚か者だということだけ。ただそれだけ。
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