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「天谷くん…この講義の後、時間あるかな?」
大学の廊下ですれ違いざまにそう問われたのは今日最後の講義前だった。
残暑の湿った風に吹かれながらさびーしく帰る用事しかなかった俺は、この同級生の誘いににべもなくうなづいた。
目の前で素直にホッとする若狭助玖(ワカサ タスク)は、サークル仲間だ。
と言っても、俺らの間には共通項を見つけることの方が難しい。
俺が体育会系な環境で育ってきたとするなら、奴は正反対の文系病弱ししおどしカッコーンな世界で生きてきたかのような優男。
サークルが一緒じゃなけりゃ話す機会もなかった奴だった。
「それじゃあ、駅の向こうのテアタマセンター前で待ち合わせだよ」
「おう」
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