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うちのサークル御用達の待ち合わせ場所も若狭が言うと、なんだかお高めのデパートにでも聞こえてしまいそうだ。
実際はただの駅前で、飲み屋ビルがごちゃごちゃひしめく歓楽街の入口なんだがな。
「それで…」
「あ?」
「う、うんと…あの、僕は明日の為って言うか、えと、ちょっと別の事で用意しておきたいことがあって。天谷くんは先に行って待ってて、くれないかな」
若狭は焦ってるのか、早口で捲し立てる。
人を誘うにしては何だか苦しげに見えてどうしたのやら。
「あぁ…別にいいけど。んじゃ飲み屋の」
「飲み屋は大丈夫!僕がもう予約しておいたから!」
「……そ、そうかよ」
「うん!それじゃ!」
「ぁ、おい」
にこやかな顔になったと思えば、一方的に言いおいて廊下をたったか駆けていってしまった。
俺は背中を見送りながら、会費を聞き逃したことに気づく。
「ま、あとでいっか」
俺たちの所属するサークルは、『現代文化研究サークル』と言う。
はっきり言おう。
ただの合コンサークルだ。
やることは調査・研究とレポート作成で、最近のニュースをいくつか書き込めばOKが出るようなかなり不真面目な所。
「ダルい・ヤバイ・恋人ほしー」としか口を開かないメンバーにどうも馴染まない空気を放つ若狭の存在は、在籍者の中で群を抜いて浮いていた。
先輩曰く「こういう奴がたまにしっかりした研究レポ書いてくれるから、このアホみたいなサークルが存続出来てんだヨなぁ」とのこと。
そんな若狭が初の合コンを主催すると言う。
同期メンバーとしては行って協力してやるのが仲間ってもんだろ。
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