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「主にお客様のご案内やエスコートだね」
「へ?ご案内なんてボーイみたいな仕事」
「ボーイだってどのホテルでも尊い仕事だよ」
「すっすみません;」
「私のホテルはスタッフも少なく、私も直接お客様をエスコートするからね」
「お一人で!?」
「結構出来るものだよ。試しに体験して…」
それまで楽しそうに話していたオーナーの顔が、そこまで言って少し曇った。
「や、やりたいです!!」
「え…」
「エスコート体験!!……~~~はい!;」
ちょっと恥ずかしくて苦し紛れにズバッと握手を求めてみた。うう…やっぱり何か変だったかなぁ?;
チラリと見上げると困ったようで優しい笑顔。
「ではご案内いたしましょう」
…やっぱり腰に手ぇなのね。ははは;
「それでは田野様。本日ご所望のお部屋にご案内いたします」
「へ!?ぁ、はい!;お願いします!;」
「どうぞこちらです。足元にお気をつけて」
…びっっっくりしたぁぁぁ;もう予約してる設定なのかな?
ドキドキするけどお金持ちはこう言うことが普通なんだろうしな!それっぽく振る舞わないとダメっぽいな。
「あありがとう、オーナーさ」
すっと口の前に人差し指を出され
「田野様、本日は私を仙南とお呼びください」
「……仙南さん」
「はい。リラックスしてお楽しみくださいね」
近ーーッ!何で耳元に囁きにくるんだオーナーさーーん!!鳥肌たっちゃうよ!;
さほど距離もなく目的地までたどり着く。
「こちらがお部屋でございます」
そう言って通されたのは大スタジオ。扉を開くとステージだったスペースが簡単に片され、シーツにクッションが飾られている。
「今日は特別にポンペイ仕様でございます」
要するにあそこに敷いてあるシーツがベッド代わりってことっすかね(笑)どんな時でも設定こるんだぁ。
「お座りください。今日のコースはおまかせコースです。素敵な時間をお過ごしください」
仙南さんは嫌味無くお辞儀をする。
「仙南さんのホテルともなると、コースとかあるんですね」
「はい。ご自分で決めきれない方もやはりいらっしゃいますから」
にっこりと微笑んだ顔は俺の緊張を優しく溶かしてくれた。
「本当にありがとうございます!貴重な体験が出来ました」
立ち上がりお辞儀をすると、仙南さんは不思議そうな顔をして
「…まだ私のエスコートは終わりではありませんよ」
「へ?」
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