育斗14歳の夏

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「育斗君、ちょっと君は親父さんのことを誤解しているようだ。競馬に対しても偏見をもっているみたいだね」 浅黒く日焼けした顔にはしわが刻まれている。少し下がった目尻と眉間のしわは、楽と苦の歴史なのだろう。 人付き合いが苦手な親父だったが、この数田さんだけはなにかと気にかけてくれて、家にも何度か来たことがある。もっとも俺は面と向かって話したことはないが。 「誤解?親父のことはよく知ってますよ。典型的なダメ人間だ。なにかあればすぐ酒に逃げる。体も小さければ心も狭い。いくらお袋が献身的に支えてもつまづきっぱなし。救いようがないのは数田さんもご存知でしょう」 数田さんは黙って聞いている。少なからず俺の言ってることはあっているようだ。 「それに…数田さんには失礼ですが、競馬なんてギャンブルでしょう。欲望の捌け口の片棒を担いでそれを自分の仕事ですなんて恥ずかしくて…」 そう言い終える前にお袋の平手が飛んできた。 親父には散々殴られてきたが、お袋に殴られたのは何年ぶりだろう? 「育斗!あなた今自分が言ったこと分かってるの!謝りなさい。あなたは父の恩人に対して最低の言葉で侮辱したのよ」 「なんだよ痛てーな!本当のこと言って悪りーのかよ!いいかげん目を覚ませよ!お袋はなんであんな親父の肩ばっかりもつんだよ!もうわかんねーよ」
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