育斗14歳の夏

6/12
前へ
/12ページ
次へ
「ハハハッ、いや失礼。こんな時に笑うなんて罰当たりにもほどがあるね」 「やはり君は白沢隼人の息子だ。その頑ななところなんてそっくりだよ」 「あれだけ馬を愛した隼人の血を受け継いでいるんだ。君はこの先、競馬に深く関わる運命にあると思うんだがね」 なんでこの人はこんなに俺を競馬に巻き込もうとするんだろう? そんなに人材不足なのか?親父の息子だからって特に強調できるものなんか持ってないぞ… 「数田さんがなんと言おうと俺は親父とは違います。自分の道は自分で切り開きます」 「中学を卒業したら就職して早く一人前になってお袋に楽をさせてやるんだ」 「君が考える幸せは君の都合だけの幸せに思えるな。それでお母さんは幸せになるのかな」 どういうことだ?言ってる意味がわからない。お袋に楽をしてもらうことがいけないことなのか? 「育斗。私は育斗のなんなの?育斗の足枷になんかならないわよ」 「そもそも中学二年生の子供にそんな心配されるなんて…私相当弱って見えたのかな」 「もう泣かない!育斗には進学してもらうわ。あんたの青春を仕事漬けにして後から文句つけられたら嫌だからね」 「文句なんか言うわけないだろ!今まで苦労してきた分、楽をしたっていいじやないか」 「冗談よ。育斗の気持ちは嬉しいけど、私はまだまだこれからなんだから。勝手に隠居させないでよね」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加