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       慧を失う程、  怖い事は無い…  たとえ…  命が消えても。  「黒羽の兄様にぞっこん   されてる慧が羨ましいな」  紫は馬鹿にしたように  小さく笑った。  その笑みは、何処か  今の俺の心境を  語っていた…。  『羨ましいだと?思っても   無い事を口にするなんて、   一体いつ、誰に   習ったんだよ、紫』  俺も、見返すかの様に  思い切り笑ってやった。  「兄様…"紫"なんて   堅苦しい…俺は弟なんです   から、"大貴"って言って   下さいよ」  紫の周りにあった筈の石が  全て、紫薔薇に変わってた。  それと同様、紫を  囲む白茨。  『じゃあこれからは、   "大貴"で行くから』  周りから見れば、  きっと、和解した  兄弟に見えるんだろうな。  「じゃあ、行きますか?   雄也くん」  『………あぁ』  
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