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       誰かが呼ぶんだ……  優しく…  俺の名前を………  だけど、その声は  何処か儚くて悲しかった…。  涙が出る…。  辛い………  辛いよ…  ひかる  『ひかる…?』  ぱっと目を開け、  状況を把握しようと  辺りを見渡す。  『何、ここ………』  光と雄也と自分の家に  居た筈なのに…  翠の茨に囲まれた、  見慣れない部屋。  生活感があるから、  誰かの家…?  『光?』  ここが何処かよりも、  一番に光の姿を  確認したかった。  光が同じ空間に居ない  時間なんて有り得ない。  光はいつだって俺の  傍に居てくれる…。  『光っ!光っ……』  まるで、翠の茨に  吸い込まれるかの様に  声が届か無い…。  まさかこの茨…  『慧…………?』  まさかな…  慧がこんな檻みたいな  物を造る筈が…  
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