亡霊の徘徊

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「君はここにトラブルを集めに来ているのか」  瞳の色と同じ漆黒の髪をぼさぼさのまま放置し、ネクタイは最早意味すら失うほどに緩められ、制服のズボンを膝下までたくし上げた足には何故かサンダルをひっかけた、緩い・・・というよりは緩すぎる出で立ちの九音寺零(クオンジレイ)が、眼鏡の奥のきれいな顔を怖いほどにしかめて言った。  早咲きの桜がいそいそと蕾をつけ始めた、春。  笹丘鈴(ササオカスズ)は久しぶりに零の冷たい声を聞いていた。  肩越しに、連れてきた二人の人物が、零から無駄に放出されている不穏な空気を感じて固まっている。 「あのね九音寺くん・・・」 「断る」  まだ何も言ってないのにすっぱりとそう言い捨てると、早く帰れと言わんばかりに零がこちらに背を向けた。
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