覚醒

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「……あ、コップとかいるかな」 「……」 首を横に振る。 「お、男前だねー。まあヴィンセントとかいつも井戸桶から直接コップで汲んでがぶがぶやってるけど」 「……?」 「あ、気にしないでこっちの話ー」 少年は速足で近づいてきて、水差しを差し出してきた。彼の中には飲ませてあげるという概念は存在しないらしい。 まあこの状態のまま口の中に注ぎ入れられても困るが。 「……」 強張った体をなんとか起こして寝台に座り、水差しを受け取る。ずっしりとした重みは、弱りきった腕には辛い。 かなりの苦労をしながら、口の中に水を流し入れる。口の中に広がる冷たさと喉の渇きが潤うのが心地よく、半ば夢中で飲んだ。 ちなみに、少年は少しも手を貸さなかった。 手伝うという概念も、存在しないらしい。
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