6365人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
緑の絨毯のように広がる草原の中に聳え立つ木の幹にもたれて、まるで義務であるかのように、いつも考えてることをつらつらと考える。
日常は退屈だ。変わらない毎日が、ただ過ぎてゆく時間が、あまりに刺激が無くて、違うところに行きたい。いや、違う。
非日常が欲しい。
右手を太陽に掲げる、何かに届く気がして。何が、という訳でもないが、ただ、なんとなく手を伸ばす。
頼む。誰でもいい。誰か、俺をどこかに連れ出してくれ。
「ん?」
とそこまで考え異変に気づいた。掲げている手の平、そこから伸びる人差し指と中指の間から黒い点が見える。
「…?」
左手で目を擦りもう一度太陽を見上げる。やはり黒点が見える。それどころかだんだん大きくなっているような…
「…」
それがなんなのか確かめようと目を細める。徐々ににディテールがはっきりしていく。それは歪な五方星のようで、しかしそれは最近、それも頻繁に見ているような…そう、人だ。人が大の字に寝ているのを上から見ているような…。
「…って人ぉ!?」
そう、その空から降ってきた黒点は人だった。
…今だから言うが、それが非日常への始まりで、あれほど退屈だと思っていた日常が、どれだけかけがえのないものであるか思い知らされるとは思わなかった。つまり、その日を境に、
非日常が始まった。
―――
――――――
最初のコメントを投稿しよう!