(おどる)

189/202
前へ
/478ページ
次へ
少女はそれ以上何も言わず、難しい表情を浮かべているだけだ。 無言で立ち上がる水野の方をちらりと見ただけで、やはり何も言わなかった。 複雑といえば複雑な心境だが、そんな単語で表現できるような状況下にはない。 到底表現しきることなどできやしない、混沌と渦巻く相容れなさ。 水野は踵を返し、未だに伸びたままとなっている男の元まで近寄っていく。 仰向けの状態で白目を剥いている様は滑稽に思えた。 そんな男の首に手を伸ばそうとした時、腹部に焼けるような痛みと違和感を覚え、咄嗟にその場から後方へと跳んだ。 それと同時に、腹部の違和感が滑り落ちるかのように失われていき、代わりに生温いものが急速に広がっていく。 .
/478ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1309人が本棚に入れています
本棚に追加