(おどる)

190/202
前へ
/478ページ
次へ
腹部を確認するまでもない。 目前の男の手にはしっかりと長刃の得物が握られており、微量の緋が伝っているのである。 その刃渡りは何処に仕込んであったのか想像もできないほどの長さであり、その存在に気づけなかった自分自身にもまた驚愕するしかなかった。 「これ以上の出血は、きっついんやけどなあ……」 独り言を呟きつつ、のっそりと起き上がる男を見据えた。 どうにも読めない。 殺意があまりにも露骨過ぎる。 普通の人間が解放できる殺意にだって限界はあるが、この男にはそれがないらしい。 抱くがままに外に漏らしている。 それこそ意識があろうがなかろうが、殺意さえあれば解放し続ける。 .
/478ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1309人が本棚に入れています
本棚に追加