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そこで漸く水野は腰を上げた。
刺された左脚が痛みよろけるが、ぐっと堪える。
「鑑賞会してるほど暇じゃねえしな。アイツのとこに行ったほうが良いんやろうな」
この場所に来てから、自分自身の気持ちが矛盾を繰り返していることは重々承知である。
結局のところ、本当は何をしたいのか水野自身にもさっぱりわからないのだ。
水野は、少女が消えていった方へ歩き出す。
その視界にはもう、先程まで映っていた光景は一切入ってこない。
勿論、血に汚れた土足のまま家の中を進む。
一歩進む度に、フローリングの床から家中に足音が響き渡る。
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