(うたう)

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特にこれといって変わった箇所も見当たらない。 過去に人でも死んだのだろうか。 「こーんにーちはっ!」 やけに明るい声が降り懸かり、閉じていた瞼を持ち上げる。 陰になっていた場所で仰向けになっていたのだが、その陰の中で、さらに重なる陰がある。 もはや見慣れてしまった顔。 口元に笑みを称え、肩越しに流れる茶髪がコンクリート造りの床についてしまっている。 「……気のせいか」 「違いますよぉ! 現実です! 事実ですっ!」 知らぬ顔して瞼を閉じようとしたら、この近距離にも関わらず、盛大に叫び声をあげられた。 鼓膜に悪い。 .
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