初陣

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だからこそ、今回のいくさの勝利に、政宗は納得がいかなかった。 勝てたのはひとえに、父や岳父、その重臣と言った人達の力あったからで、政宗ひとりでは、負けていただろう。 わかっていたはずだった。 だが、実際にその力の差を目の当たりにすると、情けなくてイヤになる。 ひとりでは大切な人も守れない。 併し、1人で生きていけないのが人間の性だ。 だから助けは絶対に必要だろう。 強い、いい将ほど、部下に助けられているものだ。 ひとりで勝ちをおさめた人間などいない。 人の悪い人間に仕えたい人間なんて皆無だし、きらいな奴を命がけで助けたいとも思わない。 いたらよほどの物好きだ。 つまり、初陣でありながら、部下の力を目一杯借りて勝利した政宗は、充分に名将なのだ。 その素質を備えている。 併しそこは難しいお年頃だ。 好きな人に対しては不器用になり冷静さは欠けがちになる。 ふと、政宗の腕をまくらにまどろんでいた愛姫は、寝ぼけたとろんとした声で、ひっそりと呟いた。 「旦那様…死なないでね…無事に帰って…」 妻の言葉に、政宗はほろ苦く微笑む。
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