五話「封印」

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「でも近々バレるぞ。バンダナも疑っている」 「わかってます……けど……」  クリマは口をそっと開き、後ろをゆっくりと歩くシェイドとグローに目線を移す。 「けど、今は……まだ」  二人を見つめるクリマの瞳には、心なしか涙が溜まっているようにも見えた。  ――シェイドは、数歩前を歩くクリマを見ずに、一人考え込んでいた。 (クリマの謎が増えてしまった――)  シャンテとソフィアはクリマを知っている。いや、お互いを知っている。  だがシャンテはあの聖神話を書いた本人。そんな人とクリマは知り合い。  『魔法』という不思議な力を使いこなし、並外れた身体能力――  クリマは本当は一体何者なんだ? 「――ま、成り行きに任せるか」 「は?」  近くで歩いていたグローはいきなりのシェイドの言葉に呆気を取られた。 「はは! 何でもないよ!」  シェイドの笑い声が森のざわめきの中に溶けていった――
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