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校門まで行くと、執事服を着た女性と、黒い高級車が待っていた。
「お疲れ様ですマスター」
「ノインさん、お待たせ」
この執事服を着たノインって短髪の女性は、俺の世話をしてくれている人だ。
家に食事を作りに来たりしてくれているのだが、いくら聞いてもノインとしか名乗らない。
ちなみになぜ執事服を着ているのか尋ねると、好きだからだそうだ。
「急に御呼び立てして申し訳ございません。
ファントム卿が車内でお待ちです。」
「爺さんが会いに来るなんて、久しぶりだなあ」
ウイイーン
少しだけ窓が開いて、中から爺さんが車に乗るようにジェスチャーしていた。
ノインさんがドアを開けてくれたので、頭を片手で掻きながら乗り込んだ。
後部席が対面シートになっていたので、爺さんの正面に座った。
「久しぶりだのう、元気そうじゃな」
目の前の上品なスーツを着たダンディな爺さんがファントム卿だ。
昔、オペラ座で暴れた狂人が逃げ延び、その天才的頭脳を使って財を成した。
彼は自らの過ちを償う為に、職無き者に仕事を与え、親無き子に財を使い、弱き者に代わって暗殺まで行った。
いつしか彼は英雄になり、爵位まで持つようになった。それがこの爺さんの御先祖様だ。
俺は両親が幼い時に行方不明になっている。
その時に里親として俺を育ててくれたのが爺さんだ。
俺は、ショックで殆ど親の事を覚えていなかったので、親父と言ってもいい。
ちなみに、ノインさんは爺さんの元メイドなのだけど、メイド服を着るのを凄く嫌がったそうだ。
爺さんが無理矢理着せようとしたら、館が半壊したという笑える噂まである。
怪獣かよ。
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