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「先生の小指、俺にくれよ」
突き出された小刀がきらりと光る。
「冗談、だろ?」
思わず後ずさる足元で小枝がぽきりと折れた。
夕暮れの公園に人影は見当たらない。
「冗談じゃ、ねぇよ」
擦れた声で返す梧桐(ゴトウ)は、熱に浮かされた眼をしている。
追い詰められ、ごつごつ堅い樫の幹に背中が当たった。
「約束がほしいんだ」
「約束?」
「先生が俺だけのものになるっていう約束」
「そんなこと無理だ」
掌が喉を押さえる。
「だから、だよ」
力が加わる。喉が不快な音を立てた。
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