俺に、くれよ。

2/8
前へ
/8ページ
次へ
「先生の小指、俺にくれよ」 突き出された小刀がきらりと光る。 「冗談、だろ?」 思わず後ずさる足元で小枝がぽきりと折れた。 夕暮れの公園に人影は見当たらない。 「冗談じゃ、ねぇよ」 擦れた声で返す梧桐(ゴトウ)は、熱に浮かされた眼をしている。 追い詰められ、ごつごつ堅い樫の幹に背中が当たった。 「約束がほしいんだ」 「約束?」 「先生が俺だけのものになるっていう約束」 「そんなこと無理だ」 掌が喉を押さえる。 「だから、だよ」 力が加わる。喉が不快な音を立てた。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加