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「やめてくれよ……」
切っ先が皮膚に食い込み
一気に力が加えられた。
耐え難い、痛み。
鋭い鉄の塊が、肉を切り
骨を断つ。
声が、出ない。
僕は乾いた呻きを唇から垂れ流し、小刻みに体を震わせた。
感じた事のない程、大きな喪失感が心を覆い尽くす。
血が、頭から下がっていく。
頬に空気が冷たい。
というより、僕の頬が冷たくなっているのだ。
「俺のものだ」
頬を寄せて、耳元に囁かれた。
彼の頬は燃えるように、熱い。
耳にかかる息も、圧し掛かる身体も。
衣服を通しても、熱が伝わるほど熱い。
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