万年桜ノ木魅

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遠い遠い北の地にある小さな山に、小さな村とそれに囲まれるようにして咲き誇る巨大な万年桜があった。 その桜は村ができるよりもずっと昔からそこでひっそりと佇み、一年中咲き続けている。 そんな桜を村の人々は愛し、そして神として奉っていた。 いつからか桜から他の木々とはかなり遅れて木魅が生まれた。 その木魅は紅色の長い髪を高めの位置で纏め上げ、桜と同じ色の瞳を優しげに和らげた青年で、すぐ人々に受け入れられた。 しかし、長い時を暮らしていく間に人々は変わっていってしまった。 「わしの父が若かった頃から居るのに、お前さんは全く変わらないとは……化け物じゃ。本当はこの村の人々を喰らうつもりなのではないのか?」 「そんな…!拙者は皆と同じこの村の住人でござる。確かに拙者は万年桜より生まれた木魅故、人間ではないでござるが……決して喰らうつもりなどないでござる!」 「化け物の言うことなんて信用できないねぇ…」 次第に蓮次は村の人々から恐れられ、避けられていった。 唯一の母親である万年桜の幹で遠巻きに人々を眺めて暮らすようになり始めた頃、変化が訪れた。
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