In the Pot Ⅰ

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 相棒と俺の進行方向に横槍を入れるように乱入してきたのは、五、六体の竜とそれに乗るパイロット──いわゆるドラゴンライダーというやつ──だ。  軍の使っている竜が俺のものと違うのは、コンピューターに脳の思考回路を乗っ取られ、火器を搭載して完全に自我のない生物兵器と化している点。燃料はなんだったか……まあどうせロクなもんは使っちゃいない。ただでさえ他の追随を許さない馬力を持つ竜の推力がジェットエンジンによって無理矢理強化され、強靭な体躯と鋼の装甲が相まって恐ろしく堅く、もはやその戦闘力は従来の兵器の比ではない。  俗に機竜。戦争に毒された人間が生み出した負の奇跡。こうなってしまった竜は、自らで思考することを許されず、ただ戦いにのみ存在価値を与えられる、無機物としての烙印を押された「兵器」だ。 「腐ってやがるな……」  俺はオープンチャンネルに入らないように小さく呟いた。俺が止まったのを確認したのか、向こうも滞空飛行に移った。ノイズの混じった低い声が聞こえてくる。 『その積み荷をこちらに渡してもらおう』 「なんでだよ」 『この先は戦闘区域だ。最近、武器等の密輸者が多いので、こちらで積み荷を検査している』 「それは、こいつが武器の類いだったら没収するってことか」 『そうなる』 「武器じゃなかったら?」 『そのままお返しする。が、先ほども言ったがこの先は戦闘区域、危険なので早々に帰ってもらおう』  意味のない問答だった。悪ふざけも甚だしい。積み荷に書かれたロゴがスノウグース社のものであり、スノウグース社が軍需企業である以上、この荷の中身が兵器でない理屈はない。  が、だ。確かにそうなのだが、こいつが没収されれば当然俺の儲けはゼロ。こんな砂漠くんだりまで来てくたびれ儲けにもならんのではさすがにキツい。金のためには、ここは繕いきれないとわかっていても秘匿を貫かねばならなかった。 「俺は、こいつの中身を知らん。ただの運び屋だからな」 『だから、それを検査してやると言っている』 「んなこと言ったって、こいつは俺のオマンマの種なんでな、はいそうですかと素直に渡せねえよ。それともお宅ら、金払ってくれんのか?」 『もう一度言う。積み荷を渡せ。でなければ、安全の保証は無いぞ』  機竜の背に取り付けられた機銃の銃口が、光を受けて鋭く光った。
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