道のり

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「お母さんは、あなた達と同じように音楽家を夢みてきたの…だから専門学校にも通って、大学も行った…でもね」 母さんが言った その口から紡ぎ出された… 「受け入れてもらえなかったの…どんなに頑張っても、駄目だった…その時考えたの…力付くでも入ってみせるって…」 小さい声だが確実に耳に入る母の言葉… 俺達はただ黙って聞いていた 「願いは叶ったわ…でも同じ音楽仲間が手を差し延べてはくれなかった…それだけならまだ良い、現実の厳しさはわかっていたから…」 この時母は一体どんな気持ちだったのか、俺は知るよしも無く… 「いじめ…があったの…別の世界で生きてきた私達は皆敵同士、それだからなのかもしれないけど、お母さんは頻繁に受けたわ…楽器を壊されたり、楽譜を切られたり…母さんはあなた達にこんな想いはさせたくないの…だから…」 俺は母親が何を言いたいのかわかった… おそらく莉帆も… 母親は俺達に幸せであってほしいと願っている、俺にはそう伺えた 「母さん、俺は誰が何と言おうと夢を諦めるつもりは無い もし母さんみたいな事になっても必ず何処かに味方になってくれる人は居る…」 「私達は中途半端な気持ちで夢を持っているんじゃない、だからお願い…お母さん、私達を…」 「俺達の」 「私達の」 俺と莉帆の声が重なった 「夢を叶えさせて下さい…」 母はただ泣き崩れ、座り込んだ そのあと母はゆっくりと頷いてくれた
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