第一章 はじまりのはじまり

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――世のため人のため、今宵も月に浮かぶ黒き衣を羽織りいざ参る。 「なぁーんてこと、あるわけねェじゃん」  ――あるんだけどな。  俺――浅羽涼介(アサバ リョウスケ)は前の席に座っている内海雅也(ウツミ マサヤ)から受け取った雑誌を放り投げた。 「だいたいここは日本だぜ? 今時怪盗だの何だの信じるのはどっかの宗教か、目の前の馬鹿だけだ」 「いや、マジだって! 最近雑誌とかで騒がれてる通称"黒の化身"!! もう、すっげェカッコいいんだって!!」 コイツが言ってるのは最近ちまたで有名な怪盗"黒の化身"。 怪盗なのに何故人気があるかだって? それは黒の化身に物を盗まれると、その家はたちまち景気が良くなるってこと。 実際、借金まみれの家に黒の化身が現れたことがあり、その後その家はどこにも負けない富豪になったってワケ。 そりゃあ、誰だって盗みに来てほしいわけだ。
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