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(雲雀)
教室はいつもと違う雰囲気で、また誰もがそれを気にしないように努力していた。
がしかし、結局は恐怖によって気にせずにはいられなかった。
千尋は窓側の一番後ろで、周りが怯えている数倍、怯えていた。
「ねえ」
「は、はい!」
「ん、いい返事だね」
千尋の隣の男は肘杖をつき、顔を覗き込みながら話しかけてきた。
上ずった声で返した千尋に、隣の男―――風紀委員長の雲雀は嬉しそうに口許を上げて頭を撫でる。
「あ、の…」
「何だい?授業が分からないのかい?」
「いえ…そうじゃなくて…」
モゴモゴと言いにくそうに言葉を濁らせ、出来るだけ顔を合わせないように続ける。
雲雀はそんな千尋の様子に、何か想う感情で見つめ待っていた。
「ど、どう…どうしてここで…私に話しかけてくるんですか!?」
「……どうして?
……そうだねぇ…まず、僕の問題に答えられたら、教えてあげる」
「わ、私が!?」
「第1問」
「早い!」
頭の上に手を置いたまま、千尋は答えないといけないと寿命が縮む思いだった。
「僕は君に惚れました、君は僕にどう返す?」
「え!直球ー!?」
「ほら、答えないと教えないよ?」
案外、風紀委員長は天然だった。
千尋はどう返せばいいか、口を開くのだった。
(可愛いところもあるんだ…)
(確信犯なのは、黙ってないとね)
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