-最後の恋-

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野花が絨毯のように、咲き誇る丘。 丘への階段をのぼると大きな桜が1本。その横には大きな切り株。 そして、ベンチ。 僕が大好きな場所だった。 「ここの桜、私の祖母が植えたんです。」 これが僕、藤森拓巳と、 君との出会いだった。 第一印象は“大和撫子”。 すごく綺麗な子だった。 「…誰?」 「あ…もしかしてその制服北高!? 私、明日から北高に転校する2年の藤崎愛莉!」 「同じく2年の藤森拓巳…で、どうしてこんなとこに?」 この丘は、人があまりいない。 よく見るおばあさんがいたが、そのおばあさんは、ここが大切な場所だと、よく僕に昔話をしてくれた。 幼なじみとの、結ばれなかった恋。 娘が結婚する話。 可愛い孫のいろんな話 「…祖母が亡くなったから、祖母の恋人に挨拶をしに来たの。 祖母は、ずっと思ってたから。 この、枯れた桜の樹のこと。」 もしかして…そう思った。 たぶん彼女は、あのおばあさんの孫。 おばあさんが、愛しそうに、大切そうに話していた、孫の“アイちゃん”だ。 「アイ…ちゃん?」 「へ?あ、え?」 「や…よく、おばあさんに話を聞いたから。 おばあさん、亡くなったのか…」 彼女は笑って、 「拓巳ちゃん」 と、おばあさんが僕を呼んだように、そう呼んだ。 僕は気付きもしなかった。 まさか“恋”がこんなにも早く訪れるものだなんて。 次の日に、 彼女は宣言通りにやってきた。 僕のクラスで、僕の隣の席。 偶然って凄い… そして、月日は過ぎた。 彼女の印象を180度変えて。  
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