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「拓巳ちゃん、見てて?
あの先生、ぜーったいにヅラだよ?」
転入して3ヶ月。
彼女は黙っていれば美人な人だと評判になった。
もちろん、ファンクラブもできるほど。
だから、彼女に近づく奴は僕以外にいなかった。
なぜか彼女は、僕を“拓巳ちゃん”と呼んだ。
おばあちゃんの名残
というその言葉を、そのまま聞き入れた。
「こら!藤崎!」
「ごめんなさい…先生の頭にゴミがついてたから。
まさか、偶然…バーコードになってしまっただけで…」
彼女には、教師を含んだみんながお手上げ状態だった。
「藤崎を扱えるの、拓巳くらいだよな…」
そう、付き合いの長い友達に言われるくらい、僕は藤崎の保護者みたいなものだった。
「ねぇ、拓巳ちゃん。」
「なんだ?」
「短期のバイトしない?
日給1万円で10日間!」
彼女のこの突拍子のない発言は、100%本気だから恐ろしい。
「何のバイトだ?」
「えへへーっ
私のカ・レ・シ」
「ぶっ」
「あー!ウーロン茶ー!」
彼女は、頭のいいバカだ。
僕は、そんな彼女が好きだった。
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