-最後の恋-

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だけど、冗談でも言って良いことと悪いことがある。 この女は何を言いだすんだ… 僕が彼女に想いを寄せていることを、彼女は知らない。 「バカ言ってないで、さっさと飯食えよ。」 「…バカだけど、冗談じゃない!」 彼女は、真剣な目をしていた。 意志を貫く、真っ直ぐな瞳。 僕がこの目に弱いのを、彼女は知っている。 「自分を安売りすんな。 自分を大切にしてくれよ、な?」 僕は、本物の恋人になりたかった。 バイトという変な恋人ではなく、何の変哲もない普通の恋人に。 「自分が大切だから、拓巳ちゃんに頼んだ! 私、拓巳ちゃんが好きだもん!だけど…拓巳ちゃんは私の恋人になってくれないじゃない!」 気付くと、僕は彼女を抱き締めていた。 周りの冷やかしの声なんて、僕には風の音のように聞こえた。 「いつ、恋人にならないって言った?」 「私なんかと付き合ったら、拓巳ちゃんは不幸になる。だから…」 「誰が不幸になるって決めるんだよ? 幸せか不幸か、藤崎が決めることじゃない。 僕が決めることだ。」 僕は、もういっぱいだった。 自分の中で気持ちを片付けるなんて、僕には到底ムリ。 「藤崎のことが、好きだよ。」 僕は、気付くと彼女にキスしてたんだ。 7月19日。 夏休み前のこの日、 僕らは恋人になった。  
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