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だからといって、僕らが特別変わるなんてことはなかった。
でも、キスをしたり、お互い下の名前で呼んだり、手をつないで歩くようになった。
「拓巳…私のこと好き?」
彼女はよく、こう聞いてきた。
「あぁ、好き。」
変わらず答える僕に、彼女は必ずこう答える。
「私も大好き。ごめんね、ありがと。」
何が“ごめんね”なんだと初めは彼女に問いただしていたが、“口癖!”と彼女は笑った。
夏休みの宿題は、頭のいい愛莉に教えてもらったおかげで、3日間で終わらせた。
終わってからは、毎日のように遊んだ。
お金がない僕らは、自転車で海に行ったり、夏祭りや花火大会に行った。
彼女は、いつも楽しそうに笑ってた。
「拓巳、ありがとうね。」
毎日のように繰り返されるその言葉が、なんだか切なかった。
愛莉は、夏バテでみるみる痩せていった。
「愛莉、また痩せた?」
「んー?ちょっとね、夏は食欲出ないから…」
「ちゃんと食えよ。」
「はいはーい」
彼女の痩せ方はおかしかった。
2、3㎏の減量じゃない。
8㎏…9㎏。
それくらい、だ。
拒食症を疑ったが、僕の前では、僕以上にご飯を食べる。
食後にトイレに行くこともなかった、それに手は綺麗だった。だから、過食症もないと分かったんだ。
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