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君は眩しい光に薄らと瞼を開ける。すると、そこで君の怠惰な脳髄はようやく隣にあたたかさを感じた。そうやって君は幸せを噛みしめるんだ。そばかすを気にする彼女はいつも自分を強く見せるような化粧をして、肌は息苦しいと訴えている。それを君があまり好きじゃないことをぼくは知っている。だって君は一人になると部屋でぼくを見つめながら話しかけるじゃないか。
だから、君は朝の彼女が好きなんだ。ぼくもいいと思う。個人的な好みを言えば、ぼくはもっと白い子が好きだけどね。
それで、分厚い鎧を脱いだ彼女はいつもより少し幼なくて、そんな自分が彼女は少し嫌いだと言う。けれども、君はそれも含めて彼女をいとおしいと感じているんだ。君は気付いてないかもしれないけれど、そんな彼女を見るときの君の頬はだらしなく緩んでいる。鏡にうつるその間抜けな表情を君に見せたいくらいさ。
君は彼女を起こさないように息を潜めてベッドを出ると、小さく呻いた彼女にそっと毛布をかけた。そういう優しいところは君の美点だね。ぼくにはできない。
ところで、彼女は料理がとんでもなく苦手だ。この間なんかは目玉焼きを作ろうとしたらスクランブルエッグになったくらいだ。君がそれを食べた瞬間、奇妙な顔をした理由はわかってる。何故って、彼女は一生懸命に味塩をふっていたからね。君の舌には合わないのはわかりきっている。
そんなことが続いたから君は自分から進んで料理するようになった。ぼくもそれは賢い選択だと思うよ。彼女はそれがちょっぴり気に食わないようだけど。
さて、君が器用に作った朝食をテーブルに並べた後、やることは決まっている。
「おはよう太郎。朝食だ」
もちろん、ぼくはお気に入りのチーズを受け取って勢いよくそれを頬張る。口のなかに広がるとろみと濃厚な味わいがなんとも言えないね。太郎は未だに納得してないけれど、チーズを食べる瞬間は君がぼくの近しい友人で良かったと思う。
さて、それから僕は食後の運動も兼ねてカラカラと滑車を回して走りはじめる。
何故ってこれから君は彼女を起こすだろう?
素敵なステディなんていない僕からしたら、そんなの見てらんないね。
外では喧しく雀たちがさえずっている。きっと彼らもそう思っているはずさ。
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