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次男、夏芽はマイスウィートハニーことバナナちゃん抱き枕を抱いて日が当たる縁側で気持ち良さそうに寝ている。
常に眠そうに、比例するように顔も眠そうにしている夏芽は10時間以上睡眠を取らないと誰も手を付けられない凶暴な性格の裏夏芽へと化してしまう。
少しでも寝返りをうてば日本庭園さながらの庭へと落ちてしまうだろう。
「あー、夏兄落ちそう。ん?宿題はもちろん済ませたよー」
のんびりと言った小等部6年生の五男、四季はせんべいを口でパリッと割る。
兄達と変わらず普通の少年だ。
だが、かなり計算高く事なかれ主義者だ。秋名のようだと両親は嘆いている。
ここにはいないが折香とは四季の双子の妹である。
四季とは違いクールな少女だ。
ちなみに愛読書は『実録!嫁姑バトル』や『近所の奥さんは二重人格』、『本当はヤバい童話』といった明らかに年齢にふさわしくない漫画誌だ。
折香を除いてこの兄弟は私立暁原学園の者であるという共通点がある。
暁原は由緒ある私立男子校だ。
小等部から高等部まであり、中等部と高等部は学ランに学帽という教科書に載ってそうないかにもバンカラな制服。
春行は副理事長秘書で、夏芽はこれでも英語教師だ。
弟達はもちろん生徒。
あ、となにかを思い出した春行は手を叩いた。夏芽を除いて弟達は春行を見る。
「聞きなさい、弟達。もう私は兄じゃない」
「は?春兄は俺達の兄さんだろ」
いきなりどうしたのだろうかとそれぞれ首を傾げて春行の言葉を待った。
「結婚?じゃないな…あいつと養子縁組したから姓が門澤(かどさわ)に変わったんだ」
あいつとは春行の年下の恋人である副理事長の宏志(ひろし)のことだろうが、兄が唐突過ぎることに弟達は口を開けていた。
あとで起きた夏芽に聞けば、『知ってたよ。ひろちゃんから聞いてたし…ふぁ眠い…』とのこと。
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