黒い心臓

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私は前者を選びました。 私をここまで苦しめた、その罪の正体を見ずして、私は死ねなかったのです。 私は人から離れるために、家を出ました。 数日前から、失踪を仄(ほの)めかす言動を、手当たり次第に振り撒(ま)いておきましたので、私が消えても、それは夢を叶えるための家出とでもとられるでしょう。 今頃どこかで元気にやっているという意識が、相対的に彼らを幸福にするでしょう。 それで良いのです。 彼らに罪は無いのです。 *    
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