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朋奈視点 「―――…」 (見渡す限り、お坊ちゃま…?) 日本でも有数の金持ち学校と噂される、私立鷹之[タカノ]高校に入学した朋奈。 入学早々、場違いなところに来てしまった…と、少し後悔したが後の祭り。入ってしまえば、慣れるしかないのだ。 「―――…よしっ!」 やる気を入れ直し、一歩ずつ校舎に足を踏み入れた。 ・・・ (オレ、浮いてる…?) 気合いを入れたはずなのに、早くもくじけそうだ。 「……あ、あの」 「ん、なに?」 どっちかといえば、かわいい容姿をした少年が声をかけてきた。 「机の上、すごいことになってるよ…?」 ぼーっとしていたせいか、鞄を逆さまにして置いてしまっていたらしい。チャックも閉めずにいたものだから、中身が散乱していた。 「うわっ!」 (ぼーっとしすぎだろ、オレ…!!) 「あはは、大丈夫?」 堪え切れなくなったのか、少年は吹き出して、チワワのような視線を向けてくる。 「…チワワみたいだな」 「誰が?」 「お前…ッて、なまえは?」 名前も知らずにお前は失礼だと思い、聞いてみる。 「あ、三木那由多[ミキナユタ]だよ!」 「那由多でいい?オレは、篠崎朋奈…」 那由多は、頷くと極上の笑みを浮かべた。 「よろしくね、朋奈!」 「よろしく、那由多」 (お坊ちゃまばっかりだと思ったけど…何とかやってけそう…) 気合いが核心に変わった瞬間だった。 .
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