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>「…オレンジの空は今にも崩れそうだ…終わりが始まって そして未来が生まれて…」
>東京の夜に、澄んだ歌声が降る
>「ここに告げるように夜が 今すぐにでも夜が…」
>そこまで歌った時、強い風が少女に吹き付けた
>「ふみゃっ…」
>余程歌に集中していたのだろう、少女は慌てて後向きに体を倒し、ころんと…否、どてっとベランダに落ちた
>「うみゃ~…」
>引かれていたマットレスの上で呻く
>「いい加減この高さで欄に座るのは止めろ。前に落ちたら洒落にならんぞ」
>「好きにさせてよ~…高い所が好きなんだよ」
>「ここは地上52階だ」
>部屋の中から、中国マフィアを思わせる大柄な男が出て来た
>「染識、珈琲飲みたい」
>「まったくもって無視か」
>「珈琲が飲みたいの~後甘いものが欲しいの~」
>染識と呼ばれた男は、額に掌を当て溜息をつくと、待ってろ、と言って再び部屋に戻った
>少女はにこやかに笑って大きな背中にありがとうと声をかけた
>
>暫くして染識がベランダに戻ると、当たり前の様に欄に座っている少女が居た
>「……」
>もう何も言うまいと心に決め、声をかけた
>「斑織、持って来たぞ」
>「ん、ありがと」
>隣に立って珈琲カップを渡すと、斑織と呼ばれた少女ははにかむ様に微笑んだ
>
>暫く黙ったまま珈琲を啜っていた
>「あ、そう言えばね。さっき流れ星が落ちたよ」
>「何か願ったのか?」
>「ううん、流れ星見えたとたんちょっと別の映像が…」
>「何が見えたんだ?」
>染識は間髪入れず問い返した
>斑織には過去と未来を僅かだが視る事が出来るのだ
>まぁ、過去はともかく未来は容易く変わってしまうので、必ずしもその通りになるとは限らないのだが
>「未来と過去が一緒に見えたの。何処かで誰かが零崎を始めた映像と…」
>斑織はそこで口をつぐんだ
>染識は何も言わずに斑織を見つめた
>その瞳に何かを決意したらしい
>斑織は震える唇を開いた
>
>
>「私が、死ぬ映像」
>
>
>[視界斑点]<レッドオアブラック>
>零崎斑織ゼロザキマダラオリ
>[紅染沈黒]<オールレッド>
>零崎染識ゼロザキソメシキ
>
>それが今現在の彼女らの名前だった
>
>
>
>―さぁ、落ちた流れ星が告げる未来を、見に行こう?
>
> 第四章<[斑織物師]零崎斑織と[紅染色師]零崎染識。或いは流れ星の未来>了
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