第十壱章<闇夜の宴>

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太陽は嫌いだ 私が必死になって隠している狂気を暴こうとするから 「あ、軋識さんだ。こんばんはー」 草木も眠る丑三つ時 日課である夜の散歩の途中だった少女は朗らかにそう言った 「式見っちゃ?」 「当たりです」 式見だろうと言う確信はあったのだが、以前に斑織の振りをした式見にからかわれた事があるので一応確認しておく軋識だった 「今日は一人なんだっちゃな」 「染識はお仕事で解識は……まぁちょっと色々ありまして」 ほんの少し 僅かだが寂しそうに顔を歪める どうやら今彼女が解識と離れているのはやむを得ない事情があるらしい 「レンが会いたがってたっちゃよ」 「伝えておきます。全力で逃げてって」 にっこりと笑ってそう言い放つ 別段彼女が双識を嫌っているわけではない 単純に斑織が双識を苦手としているためである 「人識には会えたっちゃ?」 「会えてません」 「東京に居るのは確かなんっちゃ?」 「確かですよ?自前の情報網で調べましたから」 「あんまり他の殺し名に借りを作るなっちゃよ」 「大丈夫ですよ、多分」 式見は暗殺者である その為に他の殺し名の協力者…つまりは情報提供者が居るのである 無論とてつもない危険性を孕んでいることは言うまでもない、が彼女は生来のカリスマ性と後天的に得た話術でその危険性を回避している 協力者である殺し名の中には喜んで彼女に従っている者もいるくらいである
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