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カランカラン
「やぁ、密祈」
「あら、朱識」
開店準備中の<Cafe's Darkish>に現れた一人の青年
零崎朱識である
「ピザトーストとブラックコーヒー頂戴」
「まだ開店してないわよ?」
そう言いつつも密祈は既に野菜を切りはじめている
その姿を横目に見ながら朱識は持ち込んだ新聞を広げた
《続く通り魔殺人事件、犯人は外国人か?》
――15日の深夜、4人の青年が路上で死体となって発見された
警察は手口と犯行現場に残された靴跡から現在続いている通り魔殺人事件と同一犯であると判断した
また聞き込みによると同時刻に事件があった路地から出てきた白い髪をした20代の男性が目撃されており、外国人の犯行の恐れも視野にいれて捜査を継続すると――
「朱識?出来たわよ?」
「あぁ…ありがとう…」
「…どうしたの?」
無言で今読んでいた記事を密祈へと指し示す
「あら…まぁ」
「解識君この店に来た?」
「えぇ、3日くらい前に」
「次来たら呼んで」
「式見ちゃん見つけた方が良いんじゃないかしら?」
「僕、夜は仕事だもん」
言ってコーヒーを啜る
「じゃあ私が探すわ」
「密祈が?無理でしょ」
「……」
「そんな怒んなくても良いじゃない。てゆーか、僕が言いたいのは、式見ちゃん見付けられんのは解識君だけってことだよ?」
「それはそうでしょうけど……染識に連絡とかとれないの?」
「携帯からファックス、果ては手紙さえも返答はオールナッシングなり。てゆーかまず届かないしね」
「試したのね…と言うか貴方も探してたんじゃない」
「そりゃもちのろん。心配だし」
解識君がさ
と朱識
「式見ちゃんは染識が保護してるから大丈夫だろーけど解識君はこのまんまじゃ自滅しちゃうだろーからさー」
「……確かにそうね」
「今んとこ、曲識と軋識が接触したけーせきがあるから、双識に頼んで根回し中。後は式見ちゃんがお仕事の為に他の殺し名に接触したらなんか手掛かりくらいは掴めるでしょ」
「朱識……あなた」
まじまじと朱識の顔を見つめる密祈
_・・・・・・・・・・・
「僕を誰だと思ってるの?」
昼間の設定
<Cafe's Darkish>店主
簀戸密祈スドミツキ
昼間の設定
[無償奉仕]<セレクトレスエモーション>
零崎朱識ゼロザキアケシキ
それが今現在の二人の名前だった
暗躍せしも、表の彼女はそれを知らず
物語はけして交錯することはない
ただただ、裏の物語を語るのみ
――さぁ、おいかけっこの始まりだ
第十弐章<暗躍せし者>了
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