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動かなかったはずの足は、早くこの場所から立ち去りたい気持ちに反応した。
丈二の前にいることが恐怖で、早く去ろうと背を向ける。
途端にグイッと腕を引かれた。
「今は雪絵があんな状態だから、君の所には行けないけど。もう少し待ってて。」
……………は?
驚いて見上げたら満足そうに微笑んだ。
「君がそんなに俺を愛してくれているとは思わなかったんだ。
弱った妻に宣戦布告しに来るほどだなんて!」
…俺は別れるつもりでいたし、本当に申し訳ない気持ちで謝罪に来たのに…。
宣戦布告?!
それどころか諸手を挙げて降参するよ。
奥さんは心を壊すほど、あんたのことを愛してるんだから。
そんな人にこれ以上苦痛を強いたくない…。
そう思っていた俺に丈ニは耳元で囁く。
「…あいつは俺の気を引きたいだけなんだ。愛してるのはお前だけだよ圭吾。」
丈ニの言葉に固まった…。
急速に冷えていく気持ちに、さっきまでの恐怖はキレイに消えた。
代わりにフツフツと湧き上がる怒り。
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