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「井川?なんか元気なくない?!」 軽快に話す同僚とは対照的に、俺は暗く淀んだ声を出していた。 「元気…ではないかな…?ちょっと、色々、あって。」 そう言って、重い頭を抱える。さっきまでの事を考えると、一気に疲れが出てきた。 丈二に奥さんの事を話されてから、ここ一週間、まともに眠れていないし、食事もほとんど取っていない。 もともとあまり肉の付いていなかった体は、鏡に映ると肋が浮いて、酷いことになっていた。 「…井川?聞いてる?!」 「…ああ…。ボーっとしてた。何?。」 そう返すと相沢が呆れたような声を出す。 「やっぱ聞いてねえじゃん…。お前なんかあったろ?! 最近食わねえし、暗いし、様子がおかしいから、みんな心配してんだぞ!!! これから付き合えよ! 飯奢ってやるから。蓮見と佐藤も呼んだし。あいつらもお前の事心配してたから。」 蓮見と佐藤は同じ仕事を担当しているチームの仲間だ。もちろん相沢も。 俺は出版社に勤めている。雑誌の企画、編集、取材やデザインなどを一つのチームでこなし、一冊の雑誌を作る。 俺達が扱っているのは若者向けのタウン誌だ。
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