タカシ go to the school.

7/17
前へ
/130ページ
次へ
「じゃあぼくが先に入るから。名前呼んだら入ってきてね」 マサルはタカシの肩を叩くと 教室に入って行った。 いつもとは違い、マサルがやってきた途端、ざわついていたクラスがしん、と静まる。 一言も囁かれないが、みんな目がキラキラと期待に満ちていた。 どこからともなく噂は流れていたらしい…。 コホン、と一つ咳をして 「んー、みんな知ってるみたいだけど…転入生が来てます」 途端、静かだった教室は一気に歓声で溢れる。 「ちょ…みんな!落ち着いて!紹介するから、…タ、タカシくん…!」 「…うるさい」 タカシの低く甘い声は、辛辣な言葉さえも魔法のようにマサルたちを惑わせた。 「ルートビッヒ・タカシだ」 タカシは何事もなかったかのように挨拶をした。 ハッとマサルは目を覚まし、 「タカシくん!席はあそこの空いてるところだから!」 「そんなに大きな声じゃなくても聞こえてる」 「あ、ごめ…!」 タカシはフッ、と大人びた笑みをマサルに残し、示された座席に向かう。 そもそも教師が生徒に謝ること自体、滅多にあることではないのに。 どう見てもタカシのほうが余裕がある。 ど…ど、ドキドキしたぁ! タカシの前では、自分が教える立場であることも何のストッパーにもならない気がした。 ハマったらどうしよう。 きっとぼくは全てを捨てることも厭わないかもしれない。 男同士…。 そんなことは分かってる。 最も悩むはずのそれすら、どうでもいいと思えるほど、タカシは魅力的だった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加