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「神隠しにあってしまうから」
忠告を受けた後に向かった先は、先程の草原。の近くにあった河野。敷き詰められた小石を踏み締め、探索しながら二人は平行に川の流れに合わせて足を進める。
「君、名前は?」
「彦波(ひこな)! 異人さんは?」
「僕は……」
言い掛けて、彼はふと言葉を飲み込んだ。
「“おもちゃ屋さん”って呼んでくれないかな」
「おもちゃ屋さん? じっちゃっと同じだな!」
「今は商売道具持ってないけどね」
名で呼んで貰う事を避けた社長は、“それどころか手ぶらだよ”と両手をぶらぶらと揺らす。そして、何を思ったか唐突に足場の石ころを拾った。
「でも、此れで充分遊べる」
次いで彼は石を河へと投げる。石は四回程、まるでカエルの様に水面を飛び跳ねると“ぽちゃん”と音を立てつつ河へ沈んだ。
「あっ、オイラもやる!」
真似して石ころを投げる彦波。しかし彼の場合、一度も飛び跳ねる事なく沈んでしまった。
「もっと平べったい石じゃないと駄目だよ」
「むー」
挫けず何度も石ころを投げる彦波を尻目に、社長は今度は石を積み上げ始める。彦波が飽きて振り向く頃には、社長の膝辺りまである石の柱が出来ていた。
「すごいなすごいな!」
純粋な尊敬の眼差し。そしてまた真似をし始める彦波に社長は安らぎを覚えた。
(和むなぁ。邪魔も無いし暫く此のまま「異人さんだ!」
過ごせかった。社長の言葉を遮りつつ集まって来たのは、彦波と同じぐらいの子供達。
其の外見年齢と彦波の親しさからすると、恐らく彼の友達だろう。
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