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社長は再び石を拾うと、縦に器用に立たせ列を作り始める。ドミノだ。
「此れは初めてかな?」
端の石を軽く叩くと、其れ等は順番に綺麗に崩れていく。其れを見た子供達は真似して石を立ててみる。
しかしデコボコした河野に不安定な石ころはすぐ倒れ、並ぶ前に崩れてしまう。
「おもちゃ屋さんなんでできんだ?」
「其れは僕がおもちゃ屋さんだから」
答えになっていない答えに、彦波達は素直に尊敬の眼差しを向けた。
「じゃオイラもいつかできるな! オイラおもちゃ屋さんになるから!!」
自信満々に言う彦波に、社長は素直に“出来るさ”と声援を送る。実際そう言う問題ではないと判っていたが。
「あっ、夕日」
いつの間にやら辺りは夕暮れ。河は橙色に染まり宝石の様な輝きを魅せる。そして子供達は帰らなきゃと河野から離れ始めた。
「異人さん、明日もいるか?」
「どーだろ」
「次はアタイのうちに来なきゃ駄目だよ!」
子供達に手を引かれ、共に河野を離れる社長。草原を過ぎ、おもちゃ屋や村が見える丘まで来た所で社長はふと河を見た。
「綺麗だなぁ……」
もうすぐ見れなくなるだろう河の輝き。目を細め其れを眺めていると、社長はふと彦波がいない事に気付く。
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