石ころ

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「……彦波?」  周辺では子供達が我が家へ帰る姿が伺えるが、彦波が居ない。すると社長は何かに目星を付けると、子供の群れから離れ一人草原へ向かった。  草を乱雑に掻き分け、無理矢理前へ前へ進む。大きな身体は長い草原の草が包み、目立たせない。  其の手中には、彦波。殴られたのだろう、気絶してぐったりとした彼を見て、男は気味の悪い笑みを浮かべる。 「へ、へへ……。こいつは、高くうれ……っ!!」  刹那、後頭部に走った激痛。反射的に背後を振り向くと石ころを片手に佇む、金髪の青年、ダイスが居た。 「其の子を連れて何処に行くの?」  まるで幼子の様な無邪気な笑みを見せるダイス。其れが逆に気味の悪さを際立たせる。  しかし、男はふと気付いた。彼は異人。子供より運び難いが、珍しい為より高く売れるだろう。 「返してよ、其の子」  今の所、其の異人であるダイスは油断している。体力はあるかもしれないが、彼は若い。故に力は自分の方が勝るだろう。 「わ、判った」  男が彦波を芝生の上で寝かすと、ダイスは素直に近付いて来る。男は隙を狙って青年を捕らえようと、拳を振るおうとしたが……。 「何するんだい」  知ってか知らずか、いきなりダイスは持っていた石ころを男の眼に向かって投げ付けた。
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