石ころ

9/11
前へ
/769ページ
次へ
 そして業とらしく石ころをちらつかせ、青年は男にこう言った。 「只の石ころねぇ。ははっ、其の只の石ころにしてやられてるのは誰かなぁ」  青年の足に力が掛かる。侮辱を受けた怒りで、何としても立ち上がろうとしているのだろう。  どすっ  すると青年は、片足を振り上げ男を思い切り踏みつけた。  どすっ どすっ どすっ どすっ  何度も何度も何度も。暫く繰り返していたら、男は痛みで動けず立ち上がるのを止め、屈辱で顔を歪めていた。 「あれ? もう耐えらない?」 「……ぐっ」 「駄目だね。石ころなら何に何度踏まれても耐えるのに」  反論する力も無く横たわる男。すると青年はまるで石ころを蹴飛ばすかの様に、男を蹴り上げた。  しかし大した距離も開かず、男はすぐ近くで身体を打ち付ける。 「全然跳ばないね。当たっても威力なさそうだ。ははっ、まるで石ころ以下だね」  其の言葉に、男は青年をきつく睨みつける。 「……何を怒ってるんだい? 自分は石ころみたいに硬くて、丈夫で……」  無能だと思ってるのかい? 「馬鹿だね。君は石ころ何かじゃないだろう?」  そう言うと、青年は彦波を抱え其の場を去って行った。
/769ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1544人が本棚に入れています
本棚に追加