1544人が本棚に入れています
本棚に追加
彦波の家に戻ると、じっちゃんが心配そうに二人を出迎えてくれた。
「帰りが遅いから、神隠しにあったのかと心配してたんじゃぞ」
「大丈夫だよ、多分もう神隠し起きないと思うし」
「そうかのぉ」
「あっ、でも遅くまで遊んでたら危ない事に変わりはないか」
縁側に座り彦波を隣に寝かせた後、社長は煎れてくれた茶をすすりながらのんびりと言った。呑気じゃのうとじっちゃんは呟く。
「所で、お前さんの名前はなんと言うんじゃ」
「名前? ……ス」
「ん?」
社長は貰った煎餅を弄びながら、もう一度言った。
「“ダイス”って、呼んでくれないかい?」
じっちゃんはそうかそうかと笑いながら、社長、ダイスの隣で煎餅を頬張る。
そして直ぐ横で眠る彦波の頭を撫で、じっちゃんは疲れたのかのと考えていた。
「“だいす”よ。お前さんは彦波と何をして遊んだのじゃ? 次はわしも混ぜて欲しいが……」
駄目かのぅとダイスに訊いてみるが返事は無く、代わりに静かな寝息が聞こえてくる。
彼も疲れてしまったのだろうと結論付けると、じっちゃんは彦波にも被せた毛布を部屋から運び出した。
「おろ?」
しかし戻って来ると、既に其処にダイスの姿は無く。名残と言わんばかりに、飲み掛けの湯飲みだけが代わりに縁側に置かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!