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「会見?」
社長室の中で、社長席に座り面倒臭そうに仕事をしていた社長は、秘書の其の言葉で不意に手を止めた。
「はい、取引先と。……出てくれますよね?」
「会見かぁ。シエイエスに向かわせればいいと思うんだけど」
「駄目です」
「……彼の方が人望が」
「駄目です」
「……彼の方が威厳が」
「駄目です」
「……彼の方が「社長ぉおぉぉ!」
社長と秘書の永遠と続きかねない会話を断ち切るかの如く、唐突にノックも無しに扉が開き、焦げた茶色の髪を持つ、まるで大猩猩(おおしょうじょう)の様な大柄な男が部屋に入って来た。
そして社長の前で正座したかと思うと、勢い良く頭を床につけ五体投地をする。
「あっ、丁度良い所……」
「其れは処罰が決まったという意味で御座いますか!?」
「いや、そうじゃ……」
「数々の失態を報いる為なら! 自分、例え首を切られようとも」
「落ち着いて、話を……」
「さぁ! 社長の気が変わらぬ内にどうぞ、どうぞ処罰を……!!」
ぱこんっ
秘書にクリップファイルで叩かれ、漸く話を止めた大柄な男。
「ん? 何だドリス、居たのか」
「居ましたよ。全く、貴方はもっと冷静に行動して下さい」
副社長なのだから。
「しかし以前はファイルデータを消してしまったし、其の前は社長のパソコンをオーバーヒートさせてしまったし……」
そう言って、申し訳なさそうに項垂れる副社長。心なしか彼の後頭部に垂れる、猿の尾の様な長い茶髪も申し分なさそうに揺れる。
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