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 周りの情景は一昔前の花の都の様な建築物に囲まれ、人々も其れに見合った衣装を身に纏っている。 「え、え?」  混乱する脳裏に、不意に言葉が横切った。 (アゾビ、タイ゛ンデショ……?)  其れは昨夜聞いた自身を“夢”と名乗った者の声。  嗚呼、確かにそうだ。自分は先程、見知らぬ土地で誰にも邪魔されない所で戯れたいと願った。しかし、 (いきなり飛ばさないで欲しいな! と言うか、僕がコントロールしちゃ駄目なの!?)  夢による自由の効かない力に戸惑いながらも、花の都の絵画に紛れ込んでしまった自分は目立つと、取り敢えず人気の無い路地裏に移動する社長。 (移動するなら教えてよ……。其れか、僕自身の意思で移動したいんだけど)  語り掛けても夢からの応答は無い。仕方なく彼は荷物に入れていた布と裁縫箱を取り出すと、其の場に座り込み刺繍を始めた。  何故なら彼の母国の金銭が一昔前の異国に通じる筈は無く、彼は無一文同然であり豪遊も何も出来ないからだった。 (売れば少しは足しになるかな?)  元々暇潰し用の物だったが仕方がない。やむを得ず地道に縫っていると、ふと誰かの視線を感じた。 「其処の怪しい貴公、こんな所で何をしている」 「ほぇ?」  見上げてみると、其処には派手では無いが、見事な透かし模様が入った洒落た服を身に纏った青年が居た。
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